轟課長
英社員

英太郎のひとりごとepisode12  幸先不安な健康診断Part-1(前半)

 こんにちは、英太郎です。

 前回のepisode11ではアスペルガー障がい(以下、ASDと書きます。ただし引用は除きます)の特性の一つであるシングルフォーカスについて「くだくだしく」書き綴りました。その中で、読者のことなど考えず気随気ままに書いていると、図らずも本音を吐露してしまいました。

 

 episode12では、読者不在などという書き手としてあるまじき姿勢を排し、簡潔かつ平易な表現で読者に楽しんでいただける文体にしようと決意を新たに取り組みました。

 ところが、いやはやなんとも、これが私にとっては気が遠くなるほどの難題でした。今、読者諸賢にご披露している今回のエッセイにたどり着くまで、何度書き直したかしれません。締め切りからもすでに3週間以上過ぎてしまいました。

 日々の業務報告で、私はときどき轟さんに、思いついたように現行遅延を報告します。その際の、怒りを通り越し半ば呆れて微笑んでいるであろう轟さんの顔を思い浮かべつつも、臍を噛む思いで原稿を仕上げました。

 

 新たな文体に取り組んだ※経緯———経緯などと一言で言えないほどの私の頭の中の擦った揉んだ———は、それはそれでASDの頭の中の紹介になり、読者諸賢に参考になると考えます。しかしながら、episode12のテーマであるASDのシングルレイヤー思考特性の説明から大きく外れてしまうので、別の機会にご披露したいと思います。

※経緯:いきさつ

 

《補足説明》ASD者に共通の三つの「中核的特性」①シングルフォーカス特性、②シングルレイヤー思考特性、③ハイコントラスト知覚特性については、episode11 Part-2に米田修介先生の「アスペルガーの人はなぜ生きづらいのか?大人の発達障がいを考える」から引用の説明を記載してあります。

 

<締め切り遅延と頭の整理と菩薩の微笑の轟さん>

 轟さんには言えませんけど(ここに書いているだろうとの突っ込みはご容赦)忌憚も遠慮もなく今どきの言葉に置き換えて「ぶっちゃけ」れば、私の原稿遅延の報告を聞いているときの轟さんの表情はほとんど記憶にありません。

 

 おいっ!英太郎よ、表情の記憶がなくて何故「轟さんは怒りを通り越し半ば呆れて微笑んでいるであろう」と上に書いたのだと、読者諸賢は疑問を持つでしょう。

 

 その際の私の頭の中の状況を説明します。

轟さんに伝える具体的内容は、ひと言でいえば原稿の遅れについての釈明(言い訳かな?)です。その上、ASDは元々要点をかいつまんで説明することが苦手であることは承知していますから、拙い説明であろうが相手(轟さん)をこちらのペースに乗せて諒解させんと、勢い説明することに集中し力が入ります。

 つまり、何とか相手から得心を得よう———得心を得るなんて表現があるのかなあ?得心させるでは相手を説き伏せるようで本意に沿いません———とする説明行為そのものに、ASDの特性であるシングルフォーカス特性が発動する状態になります。

 

 説明行為にシングルフォーカス特性が発動している状態に加えて、かなりのエネルギーを割いて社会人らしく相手の目を見ているような演技をしています。

 

《補足説明》相手の目を見ることが苦手なことについてはepisode8で考察しています。

 

 こんな状態ですから、肯いたり相槌を打ったりの相手(轟さん)の反応や、ましてや微妙な表情の変化などに気付くはずもありません。

 自分が話し終わり呼吸を整える段になって、やっとのことで相手の顔のあたりを眺める程度が関の山です。

 

 話し終わり呼吸を整えて轟さんの顔の方を眺めると、いつでも穏やかな表情をたたえていたように感じました。

 しかし、私には締め切り遅れの負い目があるうえ、世間一般(というよりも社会人の仕事)では、大幅な締め切り遅延は叱責を受ける状況だろうということくらい、※如何なASDの私でも想像できます。

※如何:イカな

 

 このように我が身が置かれた状況を俯瞰し分析すれば、轟さんの表情は私が感じたままの単なる穏やかな表情ではないことは明らかです。

 

 ASDのシングルフォーカス特性が発動した自己都合のかたまりのような説明行為———そもそも締め切りに遅れることが悪いのだとの正論はこの際別にして(別にしていいのか?)———と、私でも想像可能な、ドラマや小説によくある作業の遅れで部下を叱責するような状況であっても、私が気づいたときはいつも、轟さんは穏やかな表情を浮かべていたのです。

 

 私は、轟さんはカウンセラーマインドを大いに発揮して、内心の怒り等々をコントロールして菩薩の微笑みを浮かべているのであろうと判断しました。

判断の結果として、私の頭の中にある語彙の中から、やや言い古された表現を承知で「怒りを通り越して呆れて微笑んでいるであろう」を選んだ次第です。

 そして、その穏やかな表情に、私は菩薩の微笑とタグをつけ、頭の中の本棚にファイリングしました。

 

 シングルフォーカス特性の発動で私が一呼吸付いた時の轟さんの菩薩の微笑みしか眺めていませんから、轟さんの本心については余りにも判断材料が少なくてよくわかりません。更に言えば、もともと人の気持ちを想像すること自体が苦手なものですから、何とも判断しがたい状況です。

 かといって、頭の中にある過去の経験や書物などからの情報を駆使していろいろ轟さんの本心を想像しても、※壁超推量か※揣摩臆測の※類に過ぎず、当たるはずもないと分かっています。

※壁超推量:かべこしすいりょう  ※揣摩臆測:しまおくそく  ※類:たぐい

 

 私はASDと自覚してからは、※他人(家族や身近な人も含みます)の気持ち想像に限られたエネルギーを無駄に消費したくないと決めています。しかし轟さんの穏やかな表情は私にとって曖昧のままです。曖昧のままでは頭の中で宙ぶらりんでイライラの元になります。そこで、頭の整理のために、轟さんの穏やかな表情に菩薩の微笑とタグをつけてファイリングした次第です。

※他人:ひと

 

 本当の気持ちはどうなの?と、面白半分でちょっかいを出すと、穏やかな表情の菩薩の轟の豹変に遭う※虞もあるかもしれないので、暫くは意識から外して———頭の中の本棚にファイリング済みです———様子を見ようと算段しています。

※虞:おそれ

 

<シングルフォーカスとシングルレイヤーの同時発動>

 本題に入る前の前置きがだいぶ長くなってしまいました。

 このエッセイを書きあげるまで何度書き直したかしれないと前記しました。前置きが長くなってしまった原因である原稿遅延の理由分析に※字数を使っています。

※字数:じかず

 

 読者諸賢はとうにお気づきでしょう、私の文体に何ら変わりのないことを。

 文体の変更について結論のみを述べると、いろいろ試みるも無きに等しい程の自分の文才の壁に早々とぶち当たり、変えることは困難であると気づきました。

 自分で決めた文体変更作業を予定通りに展開できなかったことに対しての怒りを抑えることは出来なくても、文体の変更はスパッと観念することができました。 

《補足説明》episode13で説明予定のハイコントラスト知覚特性の発動です

 

 文体の変更はスパッと切り捨てることができました。しかし、文体変更を切り捨てるまでの作業予定が思い通りにこなせなかったことへのイライラは残っています。

 そのイライラを鎮火しようと頭の中を調べると、もう一つ別のイライラがあることが分かりました。この別のイライラからは、※鞴のように文体変更作業の予定遅延のイライラに風が送られていて、こりゃあ鎮火に時間がかかるぞと悟りました。

※鞴:ふいご

 

 別のイライラとは、Episode12で書きたいことの整理がつかなかったことが起因しています。頭の中でいろいろな情報が雑然かつ不規則、無秩序に我こそを優先しろと乱立しある物は突出し、次いで情報同士が小競り合いを始め収拾がつかなくなっていました。こちらのイライラを一言で言えば、原稿執筆が予定通に進まないイライラです。

 

 私の頭の中は、上に書いた二つのイライラで一触即発かつ混沌を極めていました。どおりでPCに向かっても何もできない状況が続いていたわけです。

 

 そうこうするうちに、予定通りに進めることができなかったことが原因の二つのイライラは、頭の中にある怒りの爆弾の導火線に火をつけてしまいました。

 

 私のASDの経験則の一つに、「自分で作った予定通り進めることができないことが原因の怒りの爆発で周りの誰彼となく悪罵の限りを尽くすと、自分は爆発の原因となった怒りが何に起因する怒りであったのかを忘れるほどスッキリしても、社会生活で自滅の道を歩んでしまう。」があります。

 

 結局、経験則に従い、社会生活での自滅を回避するために、頭の中で※我慢忍辱我慢忍辱と※経文のように繰り返し唱え、なんとか爆発を抑え込みました。 

しかし※諦悟の道には程遠く、予定通りに進めなかった二つのイライラは熾火のように残っていました。

※我慢忍辱:がまんにんにく  ※経文:きょうもん  ※諦悟:ていご

 

《補足説明》子どもの頃に近所のお寺のお坊さんに指導を受けたので、なんとなく仏教用語が記憶に残っています

 

 轟さんに原稿遅延の理由をもっともらしく伝えたり、熾火となった二つのイライラを小出しに轟さんにぶつけたりしながら、私は累卵の危うさで怒りの暴発を※凌いでいました。

 そんななか、轟さんは常に冷静かつ菩薩の微笑で、私のイライラや怒りの原因と状況を分析してくれました。

※凌:シノいで

 

 それらの轟さんの分析をもとに自分なりに振り返り、何とか私の頭の中の嵐の次第を書き留めたのが、今まで書いてきた内容です。

まとめたことにより嵐が収まり、やっとこさ健康診断とASDの特性の一つであるシングルレイヤー思考特性について書き始めることができるようになった次第です。(心の中で轟さんに感謝。)

 

 読者諸賢はもうお気づきでしょう。頭の中の整理がつくまで原稿に手がつかなかったこと、それによる作業遅延はシングルフォーカス特性とシングルレイヤー思考特性の表出であることを。

 自分の頭の中を整理することのみに※三昧の境地で没頭するシングルフォーカス特性と、作業遅延による周りへの影響に全く考えが及ばず、原稿作成のみに取り組んでいるシングルレイヤー思考特性の同時発動です。

※三昧:さんまい

 

《補足説明》三昧の境地とは忘我の境地とほぼ同じ意味の仏教用語です

 

◆PART-1前半はここまでとなります

※関連記事:マンガハーティ推進室の日常『episode12 幸先不安な健康診断』

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