轟課長
英社員

英太郎のひとりごと episode6

 こんにちは、英太郎です。気が付いたらこの連載も6回目を迎えることになりました。

 前回前々回では、自閉症についてつらつらと書き綴りました。書いた内容について轟さんに感想を求めたら、一言「長い」加えて「読み手が大変だ」でした。

「あれでも随分と削ぎ落としたつもりなんですが‥‥。」私の回答です。

 口には出しませんでしたが、言いたいことの10分の1も言っていない、もっと書かせろが本音です。

 ひとりごとの6回を書くにあたり、マンガepisode6を読み直しました。桜坂さんがこんなことを言っています。「想像力の弱さが自閉症の特徴の一つ」だと。

「想像力の弱さ」と言う言葉が、私の頭の中の何かに引っかかりました。

 私は轟さんとの会話の中で、自分の書きたいことを書いただけなのに、それを「長い」と指摘されると、随分と削ぎ落としたと反論を口にしました。しかし、今振り返ると、書いているときには読み手のことなど私の意識の中には微塵も存在していません。反論は単なる自己正当化です。

 轟さんは、それに対して一切否定的なことは言わず、内容ごとに小題をつければ読みやすくなるだろうと、さらに良くなる方向を提案してくれました。

 もしも轟さんが「長い、短くしろ」と、ひと昔前にいたであろう体育会系の辣腕編集長のように頭ごなしにドヤシつけたら(そんなことはあろうはずもありませんが)、私みたいなアスペルガーはものすごく反発するか、これ以上書くことはイヤだと投げ出してしまう極端な行動に出てしまうであろうことが轟さんは分かっていたのでしょう。だから轟さんは提案という形をとったのだと思います。

 以上は私の想像です。アスペルガー(自閉症)だってこのように想像することはできます。それなのに「想像力の弱さが自閉症の特徴の一つ」と言われます。

 なぜでしょうか。これらを踏まえて、しばらくは自閉症の想像力について考察してみましょう。

体験記憶で周囲の世界を学習する

 ところで、先日、我が意を得たりと言わんばかりの文章を目にしたのでご紹介します。

「記憶力がとても良いので、自閉症のお子さんたちは自分の体験記憶を基にして周囲の世界を学んでいきます。そのため、自分の記憶通りにことが運ぶととても穏やかに過ごせるのですが、記憶と異なる展開では不安が強くなり、簡単にパニックになってしまいます。大好きなプラレールの電池が切れて新幹線が動かなくなると大変なことになります。(引用終了)」

この文は、一般社団法人日本小児神経学会ホームページ、小児神経Q&AのQ80

「自閉症について教えてください」の回答として西川医院発達診療部発達障がい研究センターの林隆先生がお書きになった文章からの引用です。

 私はepisode4と5で、①私には「斯くあるべき」がある。②斯くあるべきで分析すると自分以外のいろいろな自閉症の特徴的な行動の理由が垣間見える③斯くあるべきは、物心ついてから見聞きした事象や学校や書物や社会生活を送ってきたうえで私が学習して、自ら納得して身につけたルールだ④斯くあるべきをジャマされることは我慢できないと書きました。

 ③の「物心ついてから見聞きした事象や学校や書物や社会生活を送ってきたうえで私が学習して、自ら納得して身につけたルール」とは林先生の回答にある「体験記憶」に置き換えることが出来ると思います。子どもだから体験記憶であり、私のような成人の場合は、過去の経験や学習から納得して身に付けたルールと表現しただけで、意味としては同じでしょう。

 そして④は、斯くあるべき通りできないときに襲ってくるパニックを避けたいから、斯くあるべきをジャマされることが我慢できない、と説明を補足すれば、「ジャマされることが我慢できない」は「記憶と異なる展開では不安が強くなり、簡単にパニックになってしまう」と同義と言っても差支えないでしょう。

 episode4では斯くあるべきは私個人の考え方だと随分強調しました。林先生の回答を読むと、あながち私個人の考えだと強調する必要はない気がします。

沖田さんのパニック

 さて、少し気を良くしたところでepisode6「わかる言葉で」に戻って自閉症の想像力について考察を進めましょう。

 沖田さんは「北海道が近くなる?どうして?」とパニック状態です。

 桜坂さんは「ふつう時間は長い短い、距離は遠い近いなので、沖田さんは北海道が近づいてきたと思ってしまったのだろう」と一丸さんに説明します。

 この沖田さんのパニック状態を前記の林先生の説明に当てはめると次のようになるでしょう。

 沖田さんの記憶の中では時間は長い短い、距離は遠い近いで表現する➡北海道が近くなるなるなんて表現は記憶にない➡それに北海道が近づいてくるなんてありえない(そんな状況は記憶にない)➡記憶と異なる展開だったのでパニックになった。実に明快です。

 この沖田さんのパニックの理由を「比喩や冗談、あいまいな表現は通じにくい。想像力の弱さに起因する自閉症の特徴の一つです」と桜坂さんは一丸さんに説明しています。

 実に教科書通りの説明です。試験の回答なら文句ないでしょう。私は桜坂さんに文句を言うつもりは全くありません。想像力の弱さとは、アメリカの精神医学会が出版した精神障がいの診断と統計マニュアルのDSM-5に記載された、自閉症の特徴の一つですから、桜坂さんの説明の内容に異論を唱えるつもりは全くありません。しかしこの説明は、私にとってはあまりにも学問として自閉症を研究する学者や臨床医に、自閉症を治療する医師の視点に偏った説明と感じます。

 想像力の弱さとは、具体的にどんなことなのかの説明がありません。冒頭に書いたように、私にだって想像することはできます。それなのに、なぜ想像力が弱いと言われ、比喩や冗談や曖昧な表現が通じにくくて、それが原因でパニックになるのでしょう。この矛盾の原因は想像力の定義が曖昧、またはかなり幅広いことに起因しているような気がします。まだまだ考察を続けます。

  • Twitter
  • Facebook