障がい児保育制度障がいのある児童をサポートしながら保育を行う「障がい児保育制度」とは
動画でわかる「障がい児保育制度」の概要
はじめに
障がいのある児童を受け入れる保育所を増やすために、国はさまざまな支援を行っています。保育士を通常よりも多く配置する加配制度、保育士のキャリアアップ支援、専門支援員による保育所への訪問など、障がいのある児童が保育所で安心して生活できるように、保育所の受け入れ体制も整ってきています。
今回は、そんな保育所で行われている障がい児保育制度の概要、対象、利用できる期間、利用までの流れ、よくある疑問について詳しく解説します。
障がい児保育制度とは
「障がい児保育」とは、障がいのある児童を対象とした保育のことです。障がいの程度や発達の状態により、必要なサポートは異なることから、それぞれの障がいの特性に配慮しながら保育を行います。
障がい児保育を行っている保育所は年々増えつつあり、障がいのある児童が安心して保育所で生活できるように、さまざまな支援施策が展開されています。
障がい児保育制度の主な内容
障がい児保育制度の具体的な内容としては以下のものがあります。
- 1.加配保育士の配置
発達障がいや軽度の障がいのある子どもの介助目的として、保育所に加配保育士(※1)を配置
※1:加配保育士とは、通常の基準よりも多く配置された保育士のこと - 2.保育士のキャリアアップ研修
保育士が障がいの特性を理解し、専門的なケア方法を体得するためのキャリアアップ研修 - 3.保育環境改善等事業
保育所等において、障がい児を受け入れるために必要な保育所の改修や体調不良児の保育を実施するために必要な設備の整備などに必要な費用を一部補助。 - 4.保育所等訪問支援
保育所で障がいのある児童が専門的な支援を必要とする場合に、児童発達支援センターなどから専門支援員を派遣するサービス。 - 5.地域生活支援事業
発達障がいのある児童に対して、専門的な知識を持った専門員が保育所等に巡回支援する。実施している市町村は少ないが、原則として保育所の費用負担はない。 - 6.医療的ケア児の受入に関する支援
医療的ケアのある児童を受け入れる保育所等に対して、国による必要な経費(看護職員の配置に関する経費など)の補助。
誰が利用できるのか
保育所で障がい児保育の対象となるのは、障がい者手帳の交付を受けているか、児童相談所などで同等程度の障がいがあると判定された児童です。ただし、多くの医療的ケアが必要な場合や、児童の年齢によっては受け入れられないケースもあります。
保育所によっては、身体障がい、知的障がい、発達障がいなど、障がい児保育の対象となる障がいの種類が決められていることがあります。また、集団保育が難しいと判断された場合、3歳未満であれば、通園ではなく自宅での個別保育「居宅訪問型保育」を勧められるケースもあります。居宅訪問型保育とは、保育士が児童の自宅を訪問しマンツーマンを基本として保育を行う保育サービスです。ただし、実施している市町村は多くありません。
利用できる期間・年齢
保育所は、障がいの有無に関わらず基本的に0~5歳児までが利用できます。何歳から受け入れが可能かは、自治体や保育所によって異なります。居宅訪問型保育の場合は、原則として3歳未満の乳幼児が対象となります。
どうすれば利用できるのか
障がい児保育を実施している保育所は全国にありますが、どのような支援が必要かは個人によって異なります。入園を希望する保育所等で必要な保育が受けられるかは、事前に確認する必要があります。
保育士の加配を希望する場合は、保護者が保育所を通して認定手続きを行い、認められれば加配保育士が配置されます。保育所等への訪問支援を希望する場合は、お住まいの地域の障がい福祉・児童福祉窓口で利用申請に必要な手続きを行います。
入園を希望する保育所が決まっている場合は、保育所が定める手続きに従って入園手続きを行います。障がい児保育を実施している保育所に入園する場合は、以下のような流れで手続きを行うことになります。
1. 説明会に参加
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2. 入園先の保育所の見学
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3. 入園申込書類の提出
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4. 書類審査・面談
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5.入園可否の連絡
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6.自治体の所定の窓口での手続き・契約
保育所への入園が決まったとしても、加配保育士の体制が整わない場合は待機するケースもあります。また、必ずしもすぐに入園できるわけではなく、保育所によっては入園時期が年に1回と決められていたり、半年以上待機したりするケースなどもあります。
自治体によって保育所の手続きの方法や利用までの流れは異なりますので、お住まいの地域の保育所担当窓口で相談するか、入園を希望する保育所に問い合わせて確認するようにしましょう。
- 保育所の入園に必要な書類は、手帳(身体障がい者手帳・療育手帳(愛の手帳、愛護手帳)、精神障がい者保健福祉手帳、児童状況書、通院先の診断書(主治医意見書)などです。書類の取得に時間がかかる場合があるため、早めに準備しておきましょう。
よくある疑問とその答え
- 療育支援加算と障がい児保育加算とはどういうものですか?
- 療育支援加算と障がい児保育加算は、国の制度のひとつです。療育支援加算は、障がい児保育を実施している保育所等の施設で、主任保育士が業務に専念できるように追加で加配保育士を雇う際は、加配に関わる経費を国が負担するという制度です。
また、障がい児保育加算とは、障がいのある児童2人につき、保育士1人を配置するために必要な経費を国が負担する制度です。療育支援加算と障がい児保育加算、どちらも加配に関わる経費を負担することで、障がい児保育の質を高めることを目的としています。
- 障がい児保育制度は無料で利用できますか?
- 3歳以上の未就学児は、保育料や利用料は無料となるケースがほとんどです。ただし、食費などの実費負担分がある保育所もあるため、あらかじめ確認するようにしましょう。自治体が定める保育料、もしくは児童発達支援事業の利用料を設定している保育所がほとんどです。