通級指導通常学級に在籍しつつ、障がいの状態や教科に応じて通級指導教室での授業を受けられる「通級指導」とは
動画でわかる「通級指導」の概要
はじめに
主に軽度の障がいのある児童生徒を対象に、通常の学級に在籍して授業を受けながら、障がいの状態や教科に応じて特別な授業を受ける指導形態を「通級指導」といいます。通級指導は通級指導教室で行われ、必要に応じて通級して指導を受けることができます。小・中学校、一部の高校で実施されています。
障がいのある児童生徒を対象に行われる「通級指導」の内容、対象、通級指導の教育課程・指導時間、利用までの流れ、よくある疑問について紹介します。
通級指導とは
通常学級での学習におおむね参加することができ、一部の教科等で個別支援を必要とする児童生徒に対して、それぞれの障がいに応じた特別な指導を行うのが通級指導です。
通級指導は、通級指導教室と呼ばれる専用の教室で行われます。小・中学校などの通常学級に在籍する比較的軽度の障がいのある児童生徒を対象に、障がいによる学習上、生活上の困難を支援するための授業を実施します。対象となる児童生徒は、通級指導教室が設置されている学校に通い、指導を受けます。
文部科学省の「令和元年度 通級による指導実施状況調査結果について」によると、全国で134,185人の小・中学校、高校に通う児童生徒が、通級による指導を受けています。また、通級指導室が設置されている学校は、2017年時点で全国に6,051校あります。通級指導を受ける児童生徒の人数は毎年増加傾向にあり、通級指導教室の需要も年々高まっています。
障がいの程度や発達の状態など、それぞれの状況に合わせて指導する内容が異なるため、希望する通級指導教室が設置されていない場合は、学区を越えて近隣の学校に通うケースもあります。
>> 令和元年度 通級による指導実施状況調査結果について(文部科学省)
>> 平成29年度通級による指導実施状況調査結果について(文部科学省)
通級指導の対象
通級指導の対象となる児童生徒は、学校教育法施行規則第140条で以下のように定められています。
- 言語障がい
(発音が不明瞭であったり、話し言葉のリズムがスムーズにいかなかったりなど、言語機能の遅れが認められる児童生徒) - 自閉症
(自閉症など、他人との意思疎通に困りごとがある児童生徒) - 情緒障がい
(心理的要因で特定の場面で話すことができず、社会生活への適応が困難な児童生徒) - 弱視
(拡大鏡などを使用しても文字や図形を視覚的に認識するのが困難な児童生徒) - 難聴
(補聴器を使用しても通常の話し声を理解することが困難な児童生徒) - 学習障がい
(聞く・話す・読む・書く・計算する、または推論する能力のうち、特定のものの習得と使用が困難な児童生徒) - 注意欠陥多動性障がい
(身の回りの特定のものに意識を集中させることが難しく、衝動的で落ち着きのない行動を起こしてしまう児童生徒)
知的障がいのある児童生徒は、原則として通級指導の対象に含まれていません。通級指導を受けるためには、“通常の学級におおむね参加できること”が条件となるため、知的発達に遅れがみられる場合は特別支援学級など、他の指導方法になります。ただし、近年では軽度知的障がいのある児童生徒が通常学級に在籍するケースもあり、個別支援を実施する学級の整備が課題となっています。
また、通級指導は、希望すれば誰でも利用できるわけではありません。お住まいの市町村教育委員会担当窓口で相談し、面談や審査を経てから教育委員会等による審査が行われます。審査の結果、必要と判断されれば、通級指導に通うことが決まります。
通級指導の教育課程、指導時間
通級指導は、教科の補習などで学習の遅れを取り戻すことが目的ではありません。それぞれの児童生徒が抱える障がいによる学習上、または生活上の困難に応じた授業を行うことが目的であり、一人ひとりに応じた特別な指導を通常の教育課程に加えたり、改変したりして指導を行います。
通級指導の指導時間は、年間35~280単位時間程度、学習障がいや注意欠陥多動性障がいのある児童生徒は年間10~280単位時間とされています。児童生徒が指導を負担に感じないように配慮し、通常の学級での授業とのバランスを取りながら教育課程を編成します。
指導内容の具体的な例
- 通級指導では、障がいの状態に応じて各教科の内容を取り扱うことも認められています。たとえば、学習障がいのある児童生徒には、教科書の文章をゆっくり確認しながら音読したり、計算の手順が示された支援ツールを使って手順通りに計算する練習をしたりするなどの指導方法があります。
- その他にも、「他の人とのコミュニケーションを上手に取れるようになりたい」という児童生徒には、気持ちの伝え方や表現方法の提案など、それぞれの児童生徒が困っていることを改善できるような指導を行ったりもします。
どうすれば利用できるのか
通級指導の利用手続きは、通級指導教室が設置されている市町村教育委員会によって、手続き方法が異なります。詳細についてはお住まいの市町村就学支援相談窓口や、在籍する学校等に確認しましょう。場合によっては、相談申込書や医師により診断書等の必要書類を求められるケースがあります。
通級指導を受けられるかどうかの審査は、実施校に加えて、心理・教育・医学などの専門家、就学支援委員会、さらに教育委員会とも連携しながら十分に考慮したうえで審議されます。障がいの状態だけでなく、どこの学校で通級による指導を実施するか、他校に通う場合は移動にかかる時間はどれくらいかかるのかなど、総合的に判断されます。
学校ごとに通級指導の対象となる障がいの種別が決まっていることがほとんどですので、市町村のホームページや担当窓口で通級指導教室を設置している学校について事前に調べておくといいでしょう。
よくある疑問とその答え
- 通級指導は途中で終了できますか?
- 通級指導を途中で終了することは可能です。年度末などに保護者が在籍学級の担任と一緒に児童生徒の状況を確認し、本人とも相談した上で通級による指導を継続するか、終了するかを話し合います。児童生徒の在籍校の校内委員会において、総合的に判断した上で終了かどうかが決定されます。
また、通級指導によって学習や生活において向上がみられ、通常学級の授業のみで学習や生活が十分に可能であると判断されたなどの場合には、年度途中で終了することがあります。
- 通級指導には特別な費用負担があるのですか?
- 通級指導そのものに費用負担はありませんが、指導に必要な実費が必要なケースもあります。自治体によっては、通級指導を受けている児童生徒の就学に関して、保護者の経済的負担を軽減するために「就学奨励費」を支給しているケースもあります。利用できる制度がないか、市町村の窓口で相談してみましょう。