特別支援学校障がいのある児童生徒を対象に、障がいの特性に応じた個別の教育を行う「特別支援学校」とは
動画でわかる「特別支援学校」の概要
はじめに
特別支援学校は、障がいのある幼児や児童生徒に対して、幼稚園や小・中学校、高校に準ずる教育を行う学校です。障がいによる学習上又は生活上の困難を抱えた児童生徒のために、学校では個別支援を提供し、自立を図るために必要な知識、技能などを学ぶことができます。
特別支援学校の概要、入学対象、教育課程、入学するまでの流れ、よくある疑問について紹介します。
特別支援学校とは
特別支援学校は、障がいのある児童生徒が通う学校です。幼稚部から高等部まであり、通常の教育課程だけでなく、将来の自立した生活に向けて必要な知識や技能を学ぶことができます。特別支援学校の目的は、学校基本法第72条で以下のように定められています。
視覚障がい者、聴覚障がい者、知的障がい者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む)に対して、幼稚園や小・中学校、高校に準ずる教育を施すとともに、障がいによる学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けること
特別支援学校は、地域の特別支援教育(障がいの状態に応じて、児童生徒が持っている力を引き出す個別の教育)におけるセンター的な役割も担っており、地域の幼稚園、小・中学校、高校等の要請に応じ、必要な助言や援助を行うこともあります。
文部科学省の「特別支援教育行政の現状及び令和3年度事業について」によると、特別支援学校は全国に1,505校あり、在籍している生徒の数は144,823人(いずれも2020年時点)となっています。学校数は年々増加傾向にあります。
>> 特別支援教育行政の現状及び令和3年度事業について(文部科学省)
特別支援学校の教育環境
- 特別支援学校の定員は、法令により小・中学部で1学級6人、高等部で8人、重度の障がいがある場合は1学級3人ほどの少人数制クラスとなっています。
- 特別支援学校の教員には、通常の教員免許に加え、特別支援教育に関する教員免許を持っていることが望まれており、すでに90%以上の教員が教員免許を持っています。障がいに関する基礎的な理解に加え、特定の障がいについての専門性を持った教員が指導に当たっています。
特別支援学校と特別支援学級の違い
- 特別支援学校は障がいのある幼児・児童生徒のみが通う学校ですが、地域の学校の中には「特別支援学級」が設置されているケースもあります。名称が似ているので混同しやすいですが、特別支援学級は地域の学校の中にある、障がいのある児童生徒を対象にした少人数の学級のことで、通常学級の児童生徒と交流したり、共同で学習したりすることもあります。
- また、特別支援学校は障がいによる学習上または生活上の困難を抱えた児童生徒のために自立を図ることを目的としていますが、特別支援学級はそれぞれの児童生徒の障がいの程度や発達の状態に合わせた、適切な学習教育を行う場であることを目的としています。
特別支援学校に入学できる対象
特別支援学校の対象者は学校によっても異なりますが、学校教育法では対象となる障がいの状態について、以下のように定めています。
- 視覚障がい
両眼の視力がおおむね0.3未満、または視力以外の高い視機能障がいがあり、拡大鏡等を使用しても通常の文字、図形等の視覚による認識が不可能又は著しく困難 - 聴覚障がい
両耳の聴力レベルがおおむね60デシベル以上、かつ補聴器等を使用しても通常の話声を理解することが不可能、または著しく困難 - 知的障がい
1.知的発達の遅れがあり、他人との意思疎通が困難で日常生活で頻繁に援助を必要とする
2.知的発達の遅れの程度は1には達しないが、社会生活への適応が著しく困難 - 肢体不自由
1.肢体不自由の状態が、補装具を使用しても歩行、筆記などの日常生活における基本的な動作が不可能、または困難
2.肢体不自由の状態は1には達しないが、日常的に医療的観察指導が必要 - 病弱
1.慢性の呼吸器疾患、腎臓疾患および神経疾患、悪性新生物その他疾患の状態が継続しており、医療または生活規制が必要
2.身体虚弱の状態が継続しており、生活規制が必要
以前は、上記の就学基準に該当している場合、優先的に特別支援学校へ入学することとされていました。しかし、現在は就学基準に該当していても、就学先が特別支援学校に限られることはなく、就学支援委員会における相談を通して、特別支援学級などその他の進学先も検討することができます。
特別支援学校の具体的な教育内容
特別支援学校では、幼稚部・小・中学部・高等部・専攻科において、それぞれの学校等に準ずる教育を行うとともに、一人ひとりの障がいに応じた特別の指導を行っています。子どもの状態に応じて柔軟な教育課程が編成できるようになっており、障がい特性や健康状態、これまでの経験等に応じて、各教科等の指導内容・方法を工夫しています。ただし、知的障がい部門の特別支援学校で専攻科を置いている学校は極めて少ないのが現状です。
※小学部の例
特別支援学校の高等部を卒業すると、高卒資格は得られる?
特別支援学校の高等部を卒業した場合、「特別支援学校高等部卒業」という資格を得られます。一般的な「高等学校卒業」の資格ではありませんが、同じように大学入学資格を得ることができます。実際に特別支援学校高等部を卒業して、短大や大学に進学する人もいます。各学校の単位制度による部分もあるので、大学進学を考えている場合は、事前に各特別支援学校に問い合わせてみるとよいでしょう。
障がいによる学習上又は生活上の困難を抱えた児童生徒のために、特別支援学校では「個別の指導計画」を作成します。そして、「健康の保持」、「心理的な安定」、「人間関係の形成」、「環境の把握」、「身体の動き」、「コミュニケーション」に関する自立活動の指導を行います。
どうすれば入学できるのか
特別支援学校への入学は、お住まいの市町村の就学相談窓口(教育委員会)を通して手続きを行います。就学相談の開始時期は自治体によって異なりますが、入学1年前の5月頃からが一般的です。
教育委員会が行う就学相談では、児童生徒の様子や必要な支援について、保護者、就学支援委員会、学校等の必要な機関で話し合いを行います。特別支援学校や特別支援学級を希望する場合は、原則として就学相談をする必要があり、教育的・医学的な意見も含めた総合的な判断によって就学先が提案されます。現在は、就学先の決定にあたって本人と保護者の意見を尊重することがルールとなっています。
最終決定権は本人と保護者にあり、提案された就学先が希望と一致しなかった場合、相談の継続が可能です。特別支援学校はクラスの見学や体験ができるケースもあるので、事前に様子を見に行くと良いでしょう。
就学先は11月頃までに決定し、1月頃に正式に通知されるのが一般的です。相談の手続き方法は市町村教育委員会によって異なりますので、ホームページなどで確認しましょう。
よくある疑問とその答え
- 発達障がいがある子どもは特別支援学校に入学できますか?
- 特別支援学校の就学基準には、発達障がいは含まれていません。精神障がいも同様です。ただし、知的障がいと発達障がい(精神障がい)の両方がある子どもは、入学が可能なケースもあります。また、自治体によっては知的障がいにあたらないとされるIQ70以上で入学できるケースがあります。このように自治体ごとに事情が異なるため、担当窓口に相談する必要があります。
- 入学後に転籍や転学ができる?
- 特別支援学校入学後に別の学校へ転籍や転学することは可能です。文部科学省は2021年6月に「障がいのある子供の教育支援の手引」を新たに公表しており、その中で、“就学後も必要に応じて学校や学びの場を見直すことが重要であること”“学校や学びの場は固定したものではなく、子どもの発達・適応などの状況に応じて変更できるものであること”と記載されています。転学等を希望する場合は在籍する学校やお住まいの市町村の教育委員会へ相談しましょう。