動画でわかる障がい者福祉制度・サービス

障がい者差別解消法障がい者差別解消法と「暮らし」における差別事例

動画でわかる「障がい者差別解消法」の概要

はじめにはじめに

障がいのある人もない人も、互いに、その人らしさを認め合いながら、共に生きる社会(共生社会)をつくることを目指すために「障がい者差別解消法」があります。

「障がい者差別解消法」の概要、対象、法律が定める「差別」、暮らしの中の差別事例と合理的配慮、差別を解消する方法について詳しく説明します。

01障がい者差別解消法とは

誰もが「差別はいけないことだ」とわかっていても、障がいのある人に対する差別が起きてしまいます。そして、多くの場合にはきちんと解消されずにいます。そのため「何が差別なのか」を示す法律が必要でした。

障がい者差別解消法は、障がいを理由とする差別を解消するための具体的な対策を定めた法律です。
正式名称を「障がいを理由とする差別の解消の推進に関する法律」といいます。2013年6月に成立して、2016年4月1日に施行されました。

法律の目的は、障がいがあってもなくても、だれもが分け隔てられず、互いを尊重して暮らし、勉強し、働けるように差別を解消して、だれもが安心して暮らせる豊かな共生社会の実現することです。

サービスの主な内容

障がい者差別解消法の目的

この法律は、障がい者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、全ての障がい者が、障がい者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障がいを理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障がいを理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障がいを理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。

(障がい者差別解消法 第一条)

02障がい者差別解消法の対象となる分野・人・事業者

対象となる分野とは?

障がい者差別解消法の対象となる分野は学校や病院、交通機関、飲食店などです。障がいのある人の日常生活や社会生活全般の幅広い分野が対象となります。

ただし、障がい者の雇用については障がい者雇用促進法が適用されます。
「不当な差別的取り扱い」や「合理的配慮」の提供などの考え方は同じですが、合理的配慮の提供が行政機関だけでなく、事業者にも義務付けられています。

対象となる障がい者とは?

障がい者差別解消法の対象となるのは、障がい者手帳を持っている人だけでなく、障がいや社会のあり方によって日常生活や社会生活に相当な制限を受けている人です。ここには障がいのある児童も含まれます。そして、考え方のことを障がいの「社会モデル」といいます。

障がい者差別解消法の対象となる障がい者

「障がい者」を「身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がいを含む。)その他の心身の機能の障がい(以下「障がい」と総称する。)がある者であって、障がい及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

(障がい者差別解消法 第二条)

対象となる事業者は?

障がい者差別解消法で対象となるのは「行政機関」と「事業所」です。

「行政機関」とは、国の府省庁や都道府県、市町村などを指します。
「事業所」とは、商業やその他の事業を行う企業や団体、店舗などです。例えば、学校のPTAや自治会や町内会といった完全な任意の団体も「事業所」になるので、この法律の対象になりえます。

行政機関 ・国の府省庁や独立行政法人等
・都道府県や市町村の地方公共団体(地方公営企業を除く)
・地方独立行政法人
事業者 ・商業やその他の事業を行う者
・事業の分野や目的の営利 / 非営利、個人 / 法人の別を問わず、同種の行為を反復継続する意思をもって行う者
・個人事業者や対価を得ない無報酬の事業を行う者も対象となる(地方公営企業を含む)

03障がい者差別解消法が定めている「差別」とは

障がい者差別解消法は、障がいを理由とする差別を解消するための措置として「不当な差別的取扱いの禁止」と「合理的配慮の提供」の2つを定めています。

「不当な差別的取扱いの禁止」については、行政機関と事業者の両方に法的義務を課しています。「合理的配慮の提供」については、行政機関に法的義務、事業者に努力義務を課しています。

不当な差別的取り扱い 合理的配慮の提供
行政機関
(役所など)
してはいけない(禁止) しなければいけない(義務)
事業者
(会社・お店など)
してはいけない(禁止) するように努力する(努力義務)

「不当な差別的取扱い」の禁止とは

「不当な差別的取り扱い」の禁止とは、例えば「あなたは障がいがあるから」という理由だけでお店に入れなかったり、サービスの利用を断ったりすることです。障がいのある人に対して、役所や会社やお店などは、正当な理由がないのに「障がい者だから」という理由で差別することを禁止しています。

「合理的配慮」の提供とは

「合理的配慮」の提供とは、簡単にいうと「障がいが理由で困っている人への手助け」です。具体的には、障がいのある人の困りごとを聞き、可能な範囲で本人が求めるサポートをすることです。障がい者が利用しづらい設備や制度や社会の仕組み(社会的障壁)を取り除くための援助ともいえます。役所や会社、お店などは、負担が重すぎない範囲で対応することが求められます。

04【事例】暮らしのなかの差別事例と合理的配慮

【事例】アパートを借りようとして不動産会社(仲介業者)に相談をしたら「障がい者は火災を起こす恐れがある。だから、家を貸したくないと大家さんが言っている」という理由で家の紹介を断られてしまった。

この事例は正当な理由があるとはいえず、障がいを理由とする差別的取り扱いに当たります。
本人の障がいの程度や生活状況を確認しないままに「障がい者は火災を起こす恐れがある」として賃貸を断ることは、障がいを理由とした取り扱いとして禁止されています。不動産会社は賃貸仲介を断るのではなく、大家(賃貸人)と障がい者との間で協議を図り、それぞれの不安や懸念を払しょくして、調整することが求められます。

【事例】車椅子を使っている私が、賃貸マンションの見学をしたいと不動産会社(仲介業者)に問い合わせをしたら「車椅子での入室は、床に傷がつくからお断わりしています」と言われて、家の見学すらできなかった。

この事例も正当な理由があるとはいえず、障がいを理由とする差別的取扱いに当たります。
賃貸物件のマンションやアパートの内部が見学するのは、障がいの有無にかかわらず、賃貸借契約を結ぶかどうかを判断するために重要です。見学の際に床に傷がつかないように養生シートを敷くなど、大家(賃借人)と障がい者のどちらも利益を損なわないよう、不安を払しょくする調整を図る必要があります。

【事例】やっと賃貸アパートが決まったので、契約の手続きをすすめようとしたら「賃貸借契約に際して迷惑をかけない」という誓約書を書いて出すように求められた。

この事例も正当な理由があるとはいえず、障がいを理由とする差別的取り扱いにあたります。
一般的に「建物賃貸借契約」では誓約書の提出を求める事例もありますが、障がいの有無や程度は、それだけをもって誓約書の提出を求める根拠にはなりません。

【事例】自閉症の息子はコンビニにいくと、陳列棚に並べられた商品を並べ直そうとします。きれいに並べれば本人の気は済むのですが、その様子を見た店員さんからは「万引きをしているのではないか」と疑われてしまいました。
家から近いコンビニなので、理解を求めるために自閉症の特性を説明して、見守ってしい旨の配慮を依頼しました。それ以降は、トラブルにならずに済んでいます。

この事例は、合理的配慮の提供として成功した例に当たります。「並べること」は自閉症の特性のひとつです。そのことをコンビニの側が理解することで誤解を防ぎ、万引き通報などのトラブルになることを避けられます。また、本人の地域生活における社会的障壁が解消したことになります。
知的障がいのある人や自閉症の人は自分から合理的配慮の提供を申し出ることが難しいことも多いので、その場合は家族からの申し出ることも有効です。

【事例】ダウン症の娘の通学に路線バスを利用させたいと考えていますが、バスの利用に不安があります。学校近くの停留所で確実に降りられるかが気がかりです。
路線バスの会社に相談したところ「乗降場所と時間帯を事前に教えてくれれば、担当の運転手に降車を促すように申し送ります」と言ってもらうことができました。

この事例も、合理的配慮の提供として成功した例に当たります。路線バスの運転手は地域内のさまざまな路線を担当していますので、必ず同じ人が担当するとは限りません。しかし、この例のように会社全体として申し送りするという配慮の提供方法もあります。
知的障がいのある人や自閉症の人は自分から合理的配慮の提供を申し出ることが難しいことも多いので、その場合は家族からの申し出も有効です。

05 障がい者差別解消法で差別を解消する方法

障がい者差別解消法では、差別を解消するために各種の支援措置を定めています。具体的には、「相談及び紛争の防止等のための体制の整備」「障がい者差別解消支援地域協議会の設置」「啓発活動」「罰則」の4点となります。

相談及び紛争の防止等のための体制の整備

差別解消法第14条では、国や都道府県、市町村に対し、障がいのある人やその家族などから障がい者差別について相談があった際に対応することを求めるとともに、障がいを理由とする差別やトラブルの防止、解決のために必要な体制を整備するように定めています。

障がい者差別解消支援地域協議会の設置

差別解消法第17条では、国や都道府県、市町村が障がい者差別についての相談内容を地域で共有するネットワークである「障がい者差別解消支援地域協議会」を組織することができることを定められています。協議会の設置は任意ですが、多くの都道府県や市町村で設置されています。

啓発活動

差別解消法第15条では、国や都道府県、市町村に対し、障がいに関する住民の理解を促す啓発活動を積極的に取り組むことを定めています。具体的には、行政機関や事業者における研修、インターネットを活用した情報提供、ポスターの掲示、パンフレットの作成と配布などです。さまざまな媒体を使った啓発活動が想定されています。

罰則について

差別解消法には、障がい者差別を直接的な理由として処罰する規定はありません。罰則の規定については、「不当な差別的取扱いの禁止」について国から報告や資料提出を求められたが無視した場合や、ウソの報告をした場合などに罰金(過料)があります。